動物看護師がアドバイス!老犬を飼う上で気をつけるべきこと
こんにちは。「老犬との暮らし」第6回目のブログ更新です。
前回に引き続き、今回も動物看護師の資格保有者でペットシッターをしている池田枝里佳さんにお話を聞きました。
ペットシッターとして1200件のお宅を訪問し、ペットのお世話をしてきた池田さんに、老犬のお世話をするためのアドバイスを伺っています。最後までぜひお読みください。
毎日を快適に過ごさせてあげたいという願いを叶えるために
Q.これまでにペットシッターとして1200件の実績がある池田さんですが、老犬をお世話することも多いのでしょうか。
ワンちゃんが元気であれば飼い主さんもちょっとしたお買い物などに出かけたりできますが、高齢になるとお世話をすることが増えますし、心配で外出できなくなる飼い主さんも多くなります。そのため老犬のお世話を依頼されることはすごく多いです。
ワンちゃんが高齢になってから、ペットシッターに頼む機会が増えた飼い主さんも多いのではないでしょうか。
Q.一番印象に残っている高齢のワンちゃんのエピソードを教えてください。
印象に残っているというか、感慨深かったのは、80歳のおばあさまが飼われていたゴールデンレトリバーですね。子育てが終わり、定年を過ぎた飼い主さんがペットを飼い始める例って少なくないんです。でもそうすると、高齢の飼い主さんが高齢のペットのお世話をすることになるんです。
ただし、手放してしまう飼い主さんも多い中で、その飼い主さんはそうしなかったんです。だから私もできるだけサポートしたいと思って、毎日通わせていただいて看取りまでさせていただきました。
Q.ゴールデンレトリバーだと体も大きいですよね。
そうですね。私は体力には自信があるんですけど、このワンちゃんをお世話しているときに初めて腰を痛めてしまいました。ワンちゃんを世話するには屈むことも多いですし、高齢の飼い主さんがお世話するのは本当に大変だと痛感しました。
Q.高齢のワンちゃんのペットシッターを依頼されたときはどのようなことを心がけていますか。
高齢と言ってもそれぞれのワンちゃんで異なりますが、次第に運動量が減って、ご飯の量も減っている、というような状態になっていると思います。ワンちゃん自身も自分でおかしいなと感じているはずなので、できるだけストレスなく過ごさせてあげたいと思って接しています。
毎日を快適に過ごさせてあげたいというのが飼い主さんの願いですし、その願いを叶えるのがペットシッターとしての役目だと思っています。
ワンちゃんを悲しませないように飼い主さんには明るく接してほしい
Q.高齢のワンちゃんのお世話をしている飼い主さんはどのようなことに気をつけるといいですか。
自分で歩けなくなったり、ご飯が食べられなくなったり、病気がちになると飼い主さんが心配するのは仕方がないことなんですが、あまりにも飼い主さんに元気がないとワンちゃんが「自分のせいだ」と思ってしまいます。だから元気な時と同じように、明るく話しかけたり、甘えさせてあげてほしいですね。
飼い主として「こんなことをしてあげたい」と思うよりも、ワンちゃんの目線になって「こんなことしてほしいのかな」と思うことを大切にしてほしいです。
Q.例えば、飼い主さんから「ご飯をなかなか食べてくれない」といった相談があったときにはどのように答えますか?
「味」にこだわってペットフードを選んでいる飼い主さんが多いと思いますが、ワンちゃんにしてみると人間と同じように「匂い」や「食感」も大事なんです。
ふだん何を食べているのかにもよりますが、例えばカリカリしたドライフードをあげているのであれば、水でふやかして柔らかくしてみるように伝えます。ふやかすと香りがより強くなって、食欲がわく可能性があるんです。
反対に柔らかいウェットフードばかりをあげている場合は、たまにドライフードをあげることもおすすめしています。高齢のワンちゃんには柔らかくて消化のいいものをあげたくなるんですが、歯応えのあるものが食べたいこともあるんです。
Q.硬いものも食べたくなるんですね?
飼い主さんにアドバイスをした後で「急にカリカリを食べはじめました」なんて言われることも多いですね(笑)。
試行錯誤は大変ですが、それは飼い主さんにしかできないことなので、いろいろ試してみましょうという伝え方をすることもあります。
Q.ワンちゃんだとお散歩に行かなくなるといったことも考えられますが、その場合はどうしたらいいですか?
まだ歩ける子であれば、坂を登らせるといいと思います。ワンちゃんは後ろ足から衰えてくるので、後ろ足の蹴りを鍛えるには坂道がいいんです。飼い主さんにとって大したことない坂でも、ワンちゃんにとっては急勾配に感じたりします。なので公園にちょっとした山があれば、そこを登ってみるのもいいんじゃないでしょうか。
それから運動が嫌いとか、散歩が好きじゃないという子の場合は、お家の中でする運動がおすすめです。私がよくするのは、おやつを持った手を8の字に動かして、わんちゃんを8の字に歩かせる方法です。8の字に歩くことでわんちゃんが左右対称に筋力をつけることができます。お散歩が好きじゃないワンちゃんは足の衰えが早いんですけど、少し工夫するだけで運動させることができるんです。
ペットが幸せに暮らすために家族で情報を共有することも必要
Q.高齢のワンちゃんを飼っている方に向けてアドバイスをするとしたら、どんなことを言いたいですか。
老犬に限らないことですけど、まず家庭内でペットに関する情報をできるだけ共有してほしいと思っています。お母様がメインでお世話をしていることが多いんですが、ご主人様が何も分からないと、ペットが幸せを感じられなくなることもあるんです。ペットについて話し合う機会を設けて、「ペットが幸せに暮らすためにどうしたらいいのか」といったことをぜひ話し合ってほしいですね。
あと動物病院やトリマー、ペットショップ、ペットシッター、ペットタクシーなど「ペットに関わる人たちで周りを固めましょう」ということはよく言っています。老犬になって、通常のお世話から介護や看護になるとより大変になりますので、周りの人たちの協力を得ないとできないことが多くなってしまうんです。
Q.ペットタクシーという言葉が出てきましたけど、ペットシッターから見てもペットタクシーの存在は頼りになりますか?
そうですね。特に通院で使っていらっしゃる飼い主さんが多いですけど、やはり安心感が違います。通常のタクシーであればワンちゃんの匂いを気にするドライバーの方がいますが、ペットタクシーではそのようなことはありません。
ワンちゃん好きなドライバーさんも多く、キャリーから出して抱っこしたままでもいいと言われたこともありますし、目的地に到着するまでにずっとワンちゃんの話をしたこともあります。ワンちゃんが安心して移動できますので、ペットタクシーがもっと増えるといいなと思っています。
Q.最後に、読者に向けてメッセージをお願いいたします。
先ほども言いましたが、まずはワンちゃんのことを第一に考えて、信頼できる人、協力してもらえる人とつながっておくようにしましょう。老犬をお世話することは大変なので、お近くに頼れる方がいなければ近隣のペットシッターがきっとお役に立つと思います。
自分の子を他人に任せることを恥ずかしいと思われる飼い主さんもいらっしゃいますが、そんなことはありません。飼い主さんがいっぱいいっぱいになってしまうと、ワンちゃんが悲しい思いをしてしまいます。楽しそうな飼い主さんにお世話をしてもらうことが、ワンちゃんにとって何よりも幸せを感じている時間なんです。